2025.5.31 (土) - 6.28 (土)
開廊時間:12:00 – 18:00
日月祝休廊
トークイベント:6月14日(土)17:00 – 18:30
登壇者:青木野枝、イリナ・グリゴレ(文化人類学者)*敬称略
*ArtStickerから要予約 *日本語のみ
オープニングレセプション:5月31日(土)17:00 – 19:00
*作家が在廊致します。
ANOMALYでは2025年5月31日(土)から6月28日(土)まで、青木野枝の個展「ふりそそぐものたちー2025」を開催いたします。
本展では、昨年の東京都庭園美術館での展示から、今年3月Gallery MAZEKOZE(長野)での個展を経て大規模に発展した最新作を発表いたします。また、兵庫県立美術館の恒久設置作品に合わせて制作された新作の銅版画《Offering / Hyogo》を初めて東京で御覧いただく機会にもなります。
本展のタイトル「ふりそそぐものたち」という言葉は、私たちが流れや循環の中で生きていることを象徴し、これまで作品や展覧会で度々使われてきました。急激に変化する不安定な世界の中で、本展の「ふりそそぐもの」は私たちに何を語りかけるのでしょうか。
鉄を主な素材とする青木の作品は、工業用の鉄板を自らの手で、丸や線といったシンプルな形に、時には数千個にもおよぶパーツとして切り出す「溶断」から始まります。この工程が全体の約80%以上を占め、その後、切り出された部材を溶接することで作品が完成します。鉄は私たちの体内、そして地球上に最も多く存在する元素の一つであり、4000年にもわたり人間の文明社会の発展と共にありました。その素材が連続してできた青木の手の跡の残る有機的な彫刻は、私たちの身体とその作品が置かれた空間、さらには地球とがひとつに繋がるような心地よい経験をもたらします。青木の作品は、美術の専門的な知識の有無を問わず向かい合う者、更にはここにある全てのものに開かれています。
青木はコロナ禍の2021年にANOMALYで開催した個展「Mesocyclone」以降も精力的な活動を続けています。2023年の市原湖畔美術館(千葉)での個展「光の柱」では、高さ9メートルを超える吹き抜けの空間に、湖底に沈んだ土地とその生活に思いを馳せた新作を展示しました。また、本年1月には阪神・淡路大震災復興30周年の節目として、安藤忠雄設計による兵庫県立美術館の山と海をつなぐ屋外空間に《Offering / Hyogo》を恒久設置しました。最も記憶に新しい東京都庭園美術館での展覧会では、アール・デコ様式の建築とその歴史的背景をふまえた作品を発表、別館の妹島和世設計の白い空間では、現在を生きる者としての思いを込めた作品で展示を完結させました。
そこにあって、手で触れられるもの。
手に持つと、重さがあって熱さや冷たさを感じるもの。
ザラザラだったりさらりと撫でたりできるもの。
確かにそこにあるもの。
そういうもので彫刻をつくっている。
けれど本当につくりたいものは目には見えないものなのだ。
青木野枝
青木はスペースに限りがあるアトリエの空間では多くの作品の完成を見ることができず、設置が完了して初めて、自身もその全貌を目にします。緻密な計算やプランに忠実であることよりも、想像を超えるものへと向かうことを重視する青木野枝。ANOMALYの空間で出会う新作にどうぞご期待ください。
1958年、東京都生まれ。埼玉県在住。武蔵野美術大学大学院修了。80年代より、工業用の鉄板をパーツに溶断し、溶接して組み上げるシンプルな作業を繰り返すことで完成する作品を制作。鉄本来の硬質感や重量感、さらには彫刻という概念からも解放され、空間を劇的に変化させる。子供との鉄のワークショップの開催や各地の芸術祭に積極的に参加、作品を置く場所や人との交流をライフワークの一つとしている。主な展覧会:東京都庭園美術館(2024)、市原湖畔美術館(2023、個展)、長崎県美術館(2019、個展)、霧島アートの森(2019、個展)、府中市美術館(2019、個展)、豊田市美術館(2012、個展)、目黒区美術館(2000、個展)など多数。主な収蔵先:愛知県美術館、国立国際美術館、東京国立近代美術館、鳥取県立美術館、豊田市美術館、兵庫県立美術館、ポーラ美術館、文化庁。毎日芸術賞、中原悌二郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
撮影:山本糾