2025年2月1日 (土) - 3月1日 (土)
開廊時間:12:00 – 18:00
日月祝休廊
オープニングレセプション: 2月1日(土)17:00 – 19:00
*作家も在廊致します。
トークイベント:
①2025年2月15日(土)18:00 – 19:30 登壇者:原田裕規、卯城竜太(Chim↑Pom from Smappa!Group)
*日程が変更になりましたのでご注意ください。
②2025年3月1日(土)18:00 – 19:30 登壇者:原田裕規、西川美穂子
ANOMALYでは2月1日(土)から3月1日(土)まで、当ギャラリー初展示となる原田裕規の個展「夢と影」を開催いたします。
原田裕規(1989年生まれ)は、とるにたらない視覚文化をモチーフに、テクノロジーやパフォーマンスを用いて、社会や個人の本性(ほんせい)に迫る作品を発表してきました。
2023年には、TERRADA ART AWARD 2023で1,000組以上のアーティストからファイナリストに選出され、審査員賞(神谷幸江賞)を受賞。2024年には日本ハワイ移民資料館に初の現代美術コレクションとして《シャドーイング》が収蔵・常設化されるなど、いま最も注目される若手作家の一人です。
現在、広島市現代美術館にて原田の美術館では初となる⼤規模個展「原⽥裕規:ホーム・ポート」が開催中であり、本展はそれに合わせて開催されることとなりました。
原田は、武蔵野美術大学在学中の2012年に「ラッセン展」や「心霊写真展」の企画でデビューし、翌年に23歳にして編著書『ラッセンとは何だったのか?』(フィルムアート社)が刊行されるなど、人々を巻き込む議論喚起型のプロジェクトからその活動を開始しました。
2019年以降は断続的にハワイに滞在し、同地で独自に発展した「ピジン英語」に代表されるトランスナショナルな文化的モチーフに着目。2022年には日系アメリカ人の混成文化をテーマにした《シャドーイング》を発表し、2023年に日本ハワイ移民資料館で同館初の現代美術展として個展を開催しました。
それと並行して、2021年にはデジタルランドスケープ作品の制作をスタート。金沢21世紀美術館で開かれた個展では、長さが33時間以上あるCGアニメーション作品の《Waiting for》を発表して話題を集めました。
同作で原田は、33時間ノンストップで地球上に現存する動物の名前を読み上げるパフォーマンスを実施。またこの作品に先行して、24時間にわたり捨てられた写真を見続ける作品《One Million Seeings》を制作するなど、長尺の映像作品を次々と発表しました。
本展で展示される《ホーム・ポート》は、《Waiting for》の続編に位置付けられる「ドリームスケープ」シリーズの作品です。
2019年以降、原田はハワイ・マウイ島のラハイナを拠点にリサーチを行うようになりました。かつてハワイ王国の首都だったラハイナは、原田が研究するラッセンの故郷であり、日系アメリカ人も多く暮らす町でした。しかし、気候変動を遠因とする山火事によって2023年8月に町は壊滅。100名以上の死者を出す大惨事が起きました。
この出来事の3ヶ月後に発表された《ホーム・ポート》は、原田の夢想するラハイナの遠い過去と未来が描かれたデジタルランドスケープ作品です。
100年単位の人類の歩みは大きな打撃を受けましたが、100万年単位で土地に視線を向ければ、ラハイナはこれまでも/これからも「あの形」を保ち続けるはず。そうした想像力をもとに、地球規模の厄災を作品に昇華したのが《ホーム・ポート》です。
本展ではこの作品が、ギャラリーのメイン空間を用いて、デジタルとフィジカルの2バージョンで大きく展開されます。
写真、映像、CG、パフォーマンス、キュレーションなど、多岐にわたる原田の表現活動。しかしそのコアには一貫して「観客の参加を促す」という側面がありました。
最初期の議論を誘発する活動はもとより、24時間にわたり写真を見続ける《One Million Seeings》、33時間にわたり動物の名前を呼び続ける《Waiting for》など、いずれの作品にも、観客がいかにして作品に参加するのか/できるのかという問題意識が含まれています。
こうした特徴は「演劇性」と言い換えられるかもしれません。それを裏付けるように、原田の《Waiting for》という作品タイトルは、サミュエル・ベケットの演劇作品『ゴドーを待ちながら』(Waiting for Godot)から引用されたものでもありました。
原田作品の演劇性を象徴的に表す最新作が《光庭》です。広島以外では本展で初公開されます。
海辺の部屋にぽつんと置かれた一脚の椅子。その主は描かれておらず、これからその人物が現れるのか、すでに立ち去ったあとなのかはわかりません。本作に描かれた情景は、『ゴドーを待ちながら』と並ぶベケットの代表作『エンドゲーム』(Endgame)の世界観に類似していることがすでに指摘されています(註1)。
《光庭》を見るとき、鑑賞者の視線は中央の椅子へと自然に誘導されます。そのとき、空想上の眼前には「夢のような光景」が広がることになるでしょう。こうした仕掛けは、原田が平面作品でも「観客の参加」を促していることを示します。
またこの作品では、エドワード・ホッパーを参照して描かれたという、一定のリズムを刻む長い影も印象に残ります。夢のような世界に差し込む長い影。それは、本展を構成するふたつのシリーズ──「ドリームスケープ(=夢)」と「シャドーイング(=影)」──の存在を示唆しているのかもしれません。
このように、本展では複数のシリーズを通覧することで、原田裕規の全貌が捉えられるまたとない機会となります。原田のANOMALYでの初個展をお見逃しなきよう、皆さまのご来廊を心よりお待ちしております。
会期中の2月15日(土)には、原田と親交のあるアーティスト・コレクティブChim↑Pom from Smappa!Groupのメンバー・卯城竜太氏を、会期最終日の3月1日(土)には、西川美穂子氏をお迎えしてトークイベントを開催いたします。詳細は、ArtStickerおよび弊廊のホームページやSNSをご覧ください。
さらに会場では、2025年1月に刊行された初作品集『原田裕規:ホーム・ポート』(フィルムアート社)を販売いたします。本展出品作、広島市現代美術館の会場風景、インタビュー、論考などが収録された充実の一冊です。
それに加えて、日本ハワイ移民資料館での個展および《シャドーイング》にまつわるモノグラフ『シャドーイング:影を追う旅』(this and that)が本展会場で先行販売されます。同書には多数のエッセイのほか、「シャドーイング」の台本なども収録予定です。
本展出品作も数多く収録された2冊を、ご来廊の際には是非お手に取ってご覧ください。
原田裕規(はらだ・ゆうき)
1989年 山口県生まれ
2013年 武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科卒業(優秀賞受賞)
2016年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了
アーティスト。とるにたらない視覚文化をモチーフに、テクノロジーやパフォーマンスを用いて、社会や個人の本性(ほんせい)を「風景」や「自画像」のかたちで表現している。
2012年に「ラッセン展」と「心霊写真展」の企画でデビューし、2013年には編著『ラッセンとは何だったのか?』を上梓するなど、議論喚起型のプロジェクトからその活動を開始。2019年以降は断続的にハワイに滞在し、ピジン英語に代表されるトランスナショナルな文化的モチーフに着目。2021年にはCG作品の制作を始め、長さが33時間あるCGアニメーション作品の《Waiting for》、日系アメリカ人の混成文化をモチーフにした《シャドーイング》などを発表している。
文化庁新進芸術家海外研修制度研修員として2017年にニュージャージーに、2021年にハワイに滞在。2023年にTERRADA ART AWARD 2023でファイナリストに選出、神谷幸江賞を受賞。2024年に日本ハワイ移民資料館に初の現代美術コレクションとして《シャドーイング》が収蔵・常設化。
[展覧会概要]
作家:原田裕規
展覧会タイトル:「夢と影」
会期:2025年2月1日(土)– 3月1日(土)
開廊時間:12:00 – 18:00 日月祝休廊
オープニングレセプション:2月1日(土)17:00 – 19:00 *作家も在廊致します。
トークイベント:2月15日(土)18:00 – 19:30
登壇者:原田裕規、卯城竜太(Chim↑Pom from Smappa!Group)
トークイベント:3月1日(土)18:00 – 19:30
登壇者:原田裕規、西川美穂子
主催:ANOMALY
協力:広島市現代美術館、KEN NAKAHASHI
支援:令和6年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業
機材協力:デルタ電子株式会社