2024.11.7 (木) - 2024.11.30 (土)
開廊時間:12:00 – 18:00
休廊日:日 月 11/23(土・祝)
八島良子《メメント・モモ》上映会とトークイベント:11月30日(土) 18:00 –19:30
※一部過激なシーンがございます。閲覧にはご注意ください。
※オープニングレセプションは行いません。
※本展には性的な表現を含む作品がございます。未成年の方は保護者の同意のもと、成年の方はご自身の判断でご覧ください。
小谷元彦 《エレクトロ(ハートA)》、2004年 撮影:木奥恵三 ©Motohiko ODANI
ANOMALYでは、2024年11月7日(木)より11月30日(土)まで、グループ展「Bodies Embodied」を開催いたします。
出展アーティストは、淺井裕介、小谷元彦、開発好明、衣川明子、髙山陽介、Chim↑Pom from Smappa!Group、西野達、エレナ・ノックス、八島良子の9名。
人間を主軸におきつつ、様々な身体、例えば動物や機械、更には人の活動の産物なども含め「身体」の定義を広げることで、いかに多様な存在が相互に関連し、共存しているかを考察します。このアプローチにより、身体に対する理解を広げ、多角的な視点を持つことを促します。
身体は個人のアイデンティティを形成する重要な要素です。アーティストは身体を通じて文化、性別、人種、年齢に関するテーマを探求することも多く、また現代社会における身体の表象や期待について考察することもあります。更にメディアがどのように身体の美を定義するか、またそれが人々に与える影響はなにか。また身体とテクノロジーの融合など、身体を拡張したり、改変したりすることへの問いかけも含まれます。
淺井裕介は、多様な生命体が一つの画面に隙間なく調和するような絵画を、泥など身近な素材で制作するアーティストです。限りない反復のように見え、しかし厳密には同じものが一つもない画面は、我々の身体のミクロとマクロの世界の両方を示唆します。
淺井裕介 《手掴み》、2023年 ©Yusuke ASAI
小谷元彦は、ヒトが多様な生物の要素を取り込み突然変異したかのような象徴的な人体像を制作、幻肢 *1) など逆説的な現象を含め、拡張的な身体表現で知られています。進化は直線的に前方に向かうものではなく、退化や突然変異、また自然淘汰によって現前するとしたグールドの説を彷彿させます。
小谷元彦 《Dollo’s Law》、2009-2010年 撮影:木奥恵三 ©Motohiko ODANI
現在、東京都現代美術館で個展開催中の開発好明は、レシートを他人による日常の記録=日記としてとらえ、絵画化しています。これらを資本主義が蔓延した現代における身体として捉え、展示します。
開発好明 《2022年2月24日(ロシア、ウクライナに侵攻-白バージョン) -レシート絵画》、2022年 ©Yoshiaki KAIHATSU
衣川明子は、世界を構成する全ての生命体の奥に限りなく平等な領域が広がっていると考え、身体をかたち作る様々な小さなパーツや細胞を拡大したような絵画を制作、小さな世界が我々の全体像を構成していることを示唆するような絵画を制作します。
衣川明子 《還る》、2019年 ©Akiko KINUGAWA
また髙山陽介は、我々の思考を(ある程度)司どる人の頭部を、作家がいつも飲んでいる缶コーヒーを首にして立たせた、デフォルメした荒彫りの木彫で知られます。切り刻まれた木から生まれる人の首像は、時に周囲の環境や風景そのものを取り込み、首像の概念を拡張します。
「中庭」展示風景、CAPSULE(東京)2016年 撮影:長塚秀人 ©Yosuke TAKAYAMA
Chim↑Pom from Smappa!Groupは新作2点を発表します。ひとつは、かつてメンバーの水野が熱海で体験した断片的な記憶を基に、水野とAIが踊りを生成し、人形に転送することで憑依の芸能を表現する作品のプロトタイプです。もう一つの作品は、上記から派生し、昨年、新宿歌舞伎町で開催した展覧会「ナラッキー」から受け継ぐ芸術/芸能の境界線や、結成当初から続いている身体や欲望をテーマにした作品です。
制作風景、2024年 撮影:福田亮
時空に異化作用をもたらす大規模なインスタレーションで知られる西野達は、美的身体の基礎となるギリシャ彫刻を大胆に解体・再構成し、さらに作品そのものを照らすライトを装着した作品、及び写真作品を出品します。
西野達 《破壊されたギリシャ彫刻のフロアランプ、ヴィーナス》、2020年 ©Tatzu NISHI
エレナ・ノックスは、様々な表現形態を横断しながら人間社会に潜む問題を掘り起こし、その姿をユーモラスかつアイロニカルに作品として提示するアーティストです。今回展示する《Canny(計算)》という映像作品は、クイズ番組の暗算で有名な女性達が登場するシーンをフェムボットがウェブ検索しその結果を発声する作品ですが、その中には彼女達を客体化し、「体」についての猥雑な発言があります。本作品を含め、ノックスはジェンダーの問題だけでなく、無機物と有機的な存在との境界が消滅し、身体性が新たな地平を持つ未来を捉えています。
エレナ・ノックス 《計算》、 2013年 ©Elena KNOX
またANOMALYでは初出の八島良子は、瀬戸内に浮かぶ百島で制作活動を行っており、その自然豊かな環境の中で、自らブタを育て、屠畜し、食べるまでの一連の様子を作品とした《メメント・モモ》の上映会を開催し、展覧会には写真作品を出品します。
八島良子 《Momo, March 27, 2021》、2023年 ©Ryoko YASHIMA
前回のANOMALYのグループ展では「MATTER(s)」をキーワードに、作家がいかに「matter」(物質,事柄,問題etc.) と付き合い、いかに「matter」(作品) が存在し、どんな「matters」(状況,事態etc.) となっているか、という考察でした。
本展では人間に限らず多様な「身体」に関する作品を集め、それらのさまざまな構成要素が、現代の私たちの姿を幾重にも映すような展覧会になれば幸いです。
*1) 幻肢 手腕や足の切断後に失ったはずの手足が存在するように感じられること。